
この物語は、北欧ロシアに位置するムルマンスクの美しい町、ポニャルニェゾリの住民が、原子力発電所に大きく依存しながら豊かな生活を営んでいることから始まる。
実際、ウラル山脈の西側には32の原発が稼働している。その使用済み核燃料は、ウラル山脈東側チェリャビンスクにあるマヤーク核コンビナートで再処理されている。マヤークには、カラチャイ湖を含む無数の湖沼があり、ウラル山脈から流れ出たテチャ川が横断している。
汚染され続けて来たテチャ川流域に、ムスリュモワ村がある。その住民たちは、ガンをはじめとする不可解な病気「川の病気」に襲われ、健康と生活を破壊され続けて来た。絶望的な村に生まれ育ったミーリャとゴスマン夫妻は、NGOテチャを立ち上げて、テチャ川流域の被害とマヤークのずさんな実態と非人道性を告発して活動している。その二人の勇気ある案内で、私たちは核と原発政策の悪魔的な現実に直面することになる。
この作品の意図について、製作者で脚本を担当したオレグ・ボドロフは、次の3点を挙げている。
①ロシアの欧州部に住む人々(原発電力消費者)と当局者(原発と核産業を推進する側)たちに向けて。
②政治家やヨーロッパ諸国のNGOに向けて。
理由は、ロシア政府マヤークを使用して欧州各国の研究炉の使用済み核燃料の再処理を請け負うことを目論んでいるため。
③地球上の全ての人々のために向けて。
理由は、原発など民生用の核技術と軍事用核技術は分けることができない一つの複合技術であり、その結果、自然と人間の健康に同じような影響を与えるから。
ボドロフのこの意図は、見事に成功している。 なぜなら、『不毛の地』を見終わると誰しもが自国と世界の核・原発のあり方を考え込まざるを得なくなるからである。
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